- 治療について - ケースルクト法根管治療 症例集6
ケースルクト法根管治療 症例集6
症例51 歯髄炎と上顎洞炎を同時に発症した症例
50代 女性 右上7番(一番奥)
昨年の年末に他の歯科医院で左上の奥歯の治療を受けた。それから染みる症状が続いていたが、2か月前ほどから、歯と歯茎に強い痛みが生じる様になった。そのために、治療を受けた歯科医院に再受診するも、問題ないと言われたので耳鼻科に行ったところ、神経痛だと言われた。しかし、最近では夜中にも痛いので、当院に来院された。
診断:左上第二大臼歯 歯髄炎+歯性上顎洞炎
治療回数:2回
治療:左上第二大臼歯をケースルクト法により根管治療
経過:半年後来院時には、症状は全くなく、歯科用CTにおいても上顎洞内の透過像は消失していた。
解説:通常は、歯髄炎と上顎洞炎は同時には生じません。歯髄炎と言う歯の中の組織が細菌感染をしてしまうと、ほぼ速やかに歯髄は壊死をしてしまい、染みるような感覚は無くなります。しかし、この症例は染みる症状が非常に強かったのが特徴です。しかも、歯科用をCTを撮影すると、上顎洞内の一部にもレントゲン不透過像が認められました。よって上顎洞内にも細菌感染が生じているのが分かりました。どうして、この様な事になったかと言えば、この歯の根は3本程度あります。よって、1つの根は歯髄が完全に壊死をして上顎洞内にまで炎症を起こしたものの、もう1つの根は歯髄が速やかに壊死をせずに、歯髄の感覚が温存されていたのだと思われました。
症例52 下顎犬歯が原因の歯根嚢胞の縮小症例(症例47のその後)
40代 女性 左下3番(犬歯)
左下の顎の外側を押すと痛い。
診断:左下犬歯による歯根嚢胞
治療回数:2回
治療:左上第二大臼歯をケースルクト法により根管治療
経過:5年後に歯科用CTを撮影し経過を観察した。完全に骨表面の再生には至っていないが、症状も全くなく更なる経過観察とした。なお1年後のctと比較すると、かなりの改善がみられる。
解説:この様な症例の多くは外科的な歯根端切除術が行われる場合が多いのが現状です。しかし、手術を行うと侵襲範囲も広く、オトガイ神経にも近く、術後の知覚鈍麻も予想される。又、犬歯の長さが若干でも短くなる事は、将来的な歯の残存にも影響を及ぼします。 ケースルクト法により、完全な治癒とは言い難いですが、5年間に渡り全く症状が無く、骨の改善傾向が認められていることは評価されても良いと思われます。