インプラントの本数
「インプラントが1000本?」
街の中に「インプラント」と大きく書いた看板を、日本全国どこの地方に行っても見かけるようになりました。そのお陰で、インプラントと言う単語自体を知らない人はあまり居ないようになりました。
また、そのインプラントの看板やホームページを見ると「年間〇千本の実績」と書いてある歯科医院をかなり見かけます。
私は、いつも思うのです。
「その実績、多すぎない?」
その様な看板を掲げていると、インプラントの患者さんが各地から集中的に集まるのかと言えば、たぶんNOでしょう。恐らく、自分の歯科医院に通院している患者さんに行っているのが現状だと思います。
実際、インプラントを全面的に押し出している地方の歯科医院に見学に行ったことが有ります。そこでも、やはり通院している患者さんに対して主に行っているとの事でした。それも一度に多くの歯を抜いて、一遍にインプラントを埋めてしまうのです。その事を聞いて、埋入本数実績が多いのが理解出来ました。
当会では、30年前からインプラントによる治療を行っています。しかし、現在でも年間100本にも満たない件数しか有りません。実績件数は歯科医院の規模によるとは思うのですが、当会の規模は神奈川県で最大級です。
しかも当会では、歯科医師全員がインプラントを出来るようなスキルと知識があるのにもかかわらず、この件数なのです。
それではインプラントでは無く、ブリッジや義歯で対応しているかと言えば、これらの件数も他の歯科医院より少ないのが実情です。
それは、ブリッジや義歯に対する加工費の技工料の支払いが非常に低いことから分かります。
当会でインプラントが少ないのは、根管治療によって歯が残っているからだと思います。当会では保険診療でも側方加圧根充法は一切用いておらず、米国で主流の垂直加圧根充法を実践し、治療実績が出ているからだと思います。
それでは、どうしてインプラントの流れになるかと言えば、根管治療が前述の側方加圧根充法と言う方法で、日本では40年も同じように教育されているからだと私は思うのです。この方法では、根管治療により根の病変を完全に治せる自信を持てる歯科医師はほぼ居ないはずです。ところが、インプラントは適切に埋めれば成功率は9割となります。よって「歯は抜いてインプラント」になるのだと思います。
そして、それに輪をかけているのが、保険診療における根管治療の費用の低さなのです。その低さは度を超えており、先進国最低は当然ながら、発展途上国でもあり得ないような費用設定なのです。当然、真面目に治療をすれば赤字です。
かたや、インプラントは自由診療で、医院の裁量で費用を設定できますので、赤字になることは無いのです。
このアンバランスさ。
これがインプラントが流行る原因の一つでもあります。
非常に手前みそな言い方にはなりますが、「当会で行っている根管治療を日本全国の歯科医院で行えば、インプラントの件数は激減する」と私は考えます。
歯の根が折れたり、割れている場合は、インプラントにせざるを得ませんが、そうでない場合は、根管治療で残せる場合も多いのです。
実際、当院には、北海道を除く全国から根管治療の為に来院されています。治療回数も、半年間毎週通院する様な事はございません。
早ければ1回、長くても5回程度で終了します。
保険診療の問題もありますが、根管治療に長い間通っていても「抜歯」と言われて、衝撃をお受けになった方はご相談下さい。