総合歯科医師　総合歯科医療

歯科医師に求められる「総合力」とは？

 

一口に「歯の治療」と言っても、その内容は多岐にわたります。簡単な虫歯治療から、複数の歯を失い、さらに歯並びが悪いといった複雑なケースまで様々です。そして、基本的な顔面を構成する骨格の違いも考慮が必要な場合も多々あります。
単なる虫歯の治療であれば、歯科医師による技術力の差はそれほど大きく出ないかもしれません。しかし、複数の歯が抜けてしまい、歯並びも悪く、さらに歯周病が進行しているような複雑なケースでは、歯科医師の総合力が問われます。
例として、下の奥歯が1本抜けてしまい、元々歯並びが悪く、さらに一番奥の歯が中等度の歯周病で骨が少なくなっている場合を考えてみましょう。この場合、治療の成功を左右する鍵は、インプラント、矯正治療、そして適切な歯周病治療を総合的に判断し、実行できるかどうかにかかっています。

１．インプラントも矯正もできない歯科医師の場合

 

このようなケースで、インプラントや矯正治療の選択肢を持たない歯科医師に診てもらうと、どのような治療が提案されるでしょうか。

ア．ブリッジ

抜けた歯の両側の歯を削り、橋渡しをするように人工歯を被せる方法です。しかし、傾いた歯に無理やりブリッジを装着しようとすると、歯を平行に削るために、神経を抜かなければならないことが多くあります。
問題点
根管治療の失敗リスク： 日本の根管治療は国際基準と比べると成功率が低いとされており、治療後に歯の根の先に病巣（歯根嚢胞）ができるリスクがあります。
歯根破折のリスク： 神経を抜いた歯はもろくなり、特に傾いた歯は噛む力が横向きにかかるため、歯根が折れやすくなります。
結果として、10年以内にこの部分に不具合が生じ、抜歯に至るケースが少なくありません。

 

イ．入れ歯

歯並びが悪いと入れ歯の製作も難しくなります。無理に作ったとしても、異物感や煩わしさから、ほとんどの人が装着しなくなってしまいます。
入れ歯を使わないままでいると、残った歯に過度な負担がかかり、歯がさらに傾き、最終的には抜けてしまう可能性が高まります。

 

 

２．インプラントはできるが矯正はできない歯科医師の場合

インプラントはできるものの、矯正の知識がない場合、単に歯の隙間にインプラントを埋めるだけの治療になりがちです。
問題点
細いインプラントしか選択できない： スペースが限られるため、細いインプラントしか使えないことがあります。細いインプラントは強度が弱く、10年以内に折れたり、たわんだりして周囲の骨が吸収されるリスクがあります。
根本的な問題の未解決： 隣の歯との間に大きな隙間が残ったり、奥の歯の状態が改善されなかったりするため、長期的には他の歯を失うリスクが高まります。

 

 

３．インプラント・矯正の両方ができる歯科医師の場合

この場合、まず傾いた歯を起こし、歯並び全体を整えることで、理想的な土台を作ります。

治療の流れ
矯正治療で歯を起こす： 傾いた歯にブラケットなどの装置をつけ、歯を正常な位置に戻します。このとき、歯並び全体を整えることで、奥歯の傾きだけでなく、周囲の骨の欠損部分も改善されることが多いのです。
インプラントの埋入： 歯並びが整い、十分なスペースが確保された状態でインプラントを埋め込みます。これにより、より太く、安定したインプラントを選択でき、長期的な予後が期待できます。

結果
この総合的なアプローチは、噛み合わせ全体が理想的な状態になるため、最も長持ちする治療となります。また、歯周病を悪化させる要素である、チカラに関しても、バランスが取れることにより、治療が容易になります。

 

 

 

「総合歯科医師」「総合歯科医療」の必要性

 

多くの人は「歯科医師ならすべての治療ができる」と考えがちですが、実際はそうではありません。特に矯正治療は大学での教育が限定的で、専門的な知識と技術を持つ歯科医師はごくわずかです。
それでは、各分野の専門家が分業すれば良いのでしょうか？
しかし、矯正治療の経験がない歯科医師は、治療後の理想的なイメージを持てません。インプラント治療も同様です。そのため、一人の歯科医師が全体の治療計画を立て、実行できる能力、つまり「総合力」が不可欠となります。
そして、治療の順番を立案する事も非常に重要になります。矯正治療を先にするのか、それともインプラントを先にするかなどの順番です。
当院では、この「総合歯科医師」を育成することに力を入れています。一般治療、インプラント、矯正治療のすべてを高いレベルでこなせる歯科医師が、患者さんの長期的な口腔の健康を守るための最善の治療を提供します。
ご自身の歯の状態に不安を感じている方は、包括的な視点から治療計画をお立ていたしますので、是非とも当院にご相談ください。
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