犬歯が真ん中の前歯の歯根を溶かす症例
当院でもこの間、見られた症例です。犬歯が真ん中の前歯(永久歯)の歯根を溶かしてしまっている症例です。
普通、歯は永久歯が生えてくると上にある乳歯の歯根を溶かして乳歯が生え変わります。そして永久歯は順番で生えてきます。それが小学生の約6年間かけて生え変わります。
その中で、永久歯の生え方で、生える方向がずれている場合が問題なのです。特に悪さをするのが上顎の犬歯なのです。
上顎の犬歯は5年生(11才)程度で生えてきます。この歯は高い位置に歯胚という歯の芽が発生して、すでに生えている側切歯に沿って生えてくる場合が多いのです。
しかし、この側切歯の歯のねに犬歯がぶつかると、側切歯の歯根を溶かしてしまう場合があるのです。また、もっと位置がずれると中切歯という前歯の歯根を溶かしてしまう場合もあるのです。
文献を調べると、犬歯の萌出にともなう、中切歯の歯根が吸収してしまった例が何例か見つかりました。どの症例も吸収してしまった中切歯を抜歯して犬歯をその場所に生やして矯正を行うと共に、歯の形を被せもので治す治療をしていました。
幸い、犬歯の幅は中切歯の幅とそれほど変わりません。よってうまく矯正すれば、犬歯が中切歯の代わりになります。見た目もそれほど問題になりません。ただ、
犬歯がその位置になりますと、犬歯自体がその位置にないので、犬歯は小臼歯という後ろの歯が担います。これも見た目からするとそれほど問題にはなりません。最終的に、親知らずがあれば足りない歯の数の辻褄はあってしまいます。
問題なのは、側切歯という犬歯の横の歯が犬歯の萌出により歯根が吸収してしまった場合です。この場合、犬歯がこの側切歯の代わりになりますが、犬歯の幅は側切歯よりも幅が広いので、見た目に多少の違和感があることと、後方の歯のかみ合わせのバランスを取るために工夫が必要になってきます。
それでは、これを予防することができるのか?恐らく出来ないと思われます。
現代では、歯科用のCTがありますので、犬歯が生えてくる途中の位置も把握できます。もしもその犬歯が中切歯(真ん中の歯)の直下にあったのがCTで分かった場合にです。
その歯の萌出方向を変えることは骨を削除して歯の頭を出してきて矯正用の金具をつけて引っ張るのですが、小学生にその様なことはしにくいこと。また、理想的な方向に引っ張る事が口の中では無理な場合が多い事。また、既存の歯が邪魔をしたりするからです。
この様な犬歯の萌出に伴うトラブルは少ないながら遭遇するのです。
参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspd1963/23/2/23_494/_article/-char/ja/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/poms1991/3/1/3_1_56/_pdf