多くの歯が失われた場合、義歯叉は、インプラント(人工歯根)によるしか咬み合わせの回復は出来ません。ただ、インプラントは手術を行い骨に直接、人工歯根を埋め込むために、嫌がる方 も多いので、義歯によるかみ合わせの回復を希望される方もいらっしゃいます。
しかし、通常の義歯の場合は、ガタガタ動いたりして、良く咬めなかったりするので、ひっかけている歯が駄目る場合が多いです。そんな場合は、当然、義歯を作り直さなければ ならない事になります。叉、見た目にも歯に引っ掛ける金具が前から丸見えだったりして、いかにも義歯を入れているのがわかってしまったりします。
そこで、考えられたのが、きちっと留まり、金具が全く見えない義歯です。その名もパーシャル・パラレル・ミリング義歯。日本歯科大学の小出教授らによって考案されまして、2004年現在で、約17年の 歴史が有ります。
赤い部分の上に、人工の歯が乗っているところが、本来、歯が無いところです。そして、やや黒っぽく見えるところが、金属による部分です。
上記の図はパーシャルパラレルミリングによる構造図です。
(図の出展は下記に示す*1)
左の入れ歯の一部が、右の冠の一部にはまり込む構造です。
ご覧になると、簡単な構造の様に思えますが、作製した義歯が歯の方の冠と50ミクロンずれていたら(20分の1ミリ)絶対に、義歯は入りません。10ミクロンでも 厳しいです。と言う事は、型をとったりする事から、義歯を作る事まで、とんでもない精度が要求されます。
ちょうど、茶筒の筒と蓋のような具合ぐらいの精度です。
先ず、歯科医師側の問題としては、輪郭のはっきりした、形成(歯の削り方)と、絶対に位置のずれていない印象(型採り)が必要です。そして最も重要なのは、 実際に、義歯を作る技工操作です。言い換えれば、技工士さんの腕によります。
(上記図の出展は*2)
上記の機械を使って、金属を削ります。この操作を一般的にミリングと呼んでいます。当然にブレは許されないので、強力な電磁石で、模型は固定されています。扱いはとても難しいです。変な表現ですが、ピアノみたいなものです。音は簡単には出せ(簡単に削れる)ますが、感動を与えるレベルに曲を弾くのには(製品になるレベル)相当の修練が必要なのと似ています。
叉、鋳造や、その他研磨にしても、特に精度の高いシステムが必要なそうで、設備投資だけでも1千万はかかるそうです。と言うことなので、これを作れる技工士さんは、 日本に50人は居ないといわれています。
当院では、千葉で技工所を開業なさっている、秋山公男技工士にお願いしております。秋山技工士は、パーシャルパラレルミリングの講習会では講師を担当されており、その技は超一流です。
ガタガタ動かなくて、きっちり咬めて、しかも審美的な部分入れ歯はこれに勝る物は無いと思います。
(パーシャルパラレルミリングは費用がかなりかかるので、審美的にあまり気になさらない方の場合は、このミリング技術を応用した義歯を採用する場合もあります。 簡単に説明しますと、義歯を引っ掛ける歯の一部の面を全て平行にミリングマシンで削った冠を入れて から、金属で入れ歯を作ります。こうしますと、油圧で動く様な感覚 で義歯が入ります。当然、義歯は動きませんし良く咬めます。それが下の図です。( 専門的注釈:通常は上顎の小臼歯部はRPIは使いませんが、説明模型の為にこうしてあります。)
参考文献:
*1 パーシャル・パラレル・ミリングの設計原則 小出馨 Quintessence of Dental Technology Vol.25/2000 April 472
*2 ミリングの基礎と実践 小野寺保夫 クインテッセンス出版 1997
パーシャル・パラレル・ミリングの技工操作 秋山公男 Quintessence of Dental Technorogy Vol.25/2000 April 476
*HPの中の説明模型や臨床例は当院のものです。
<2004・6・9>