日本は世界でただ一つの被爆国であり、報道でもすぐ放射能漏れという言葉が用いられることもあり、被爆ということに関しては、とても神経質な国民であると言えます。今回、当院では歯科用のCT装置を導入するにあたり、もう一度放射線の影響について勉強をしてみました。(2009年記載)
どれだけ放射線を浴びると死亡する場合があるか
10,000ミリシーベルト位だそうです。原爆やさまざまな事故から割り出された数値のようです。
どれだけ放射線を浴びると健康に影響するのか
200ミリシーベルト以上らしいです。原子力発電所で働く人の調査によると、100ミリシーベルト以上の人だと消化器系のガンが多く発生するらしいのですが、それくらい浴びている人は酒もたばこも多く嗜んでいる人が多く、放射線だけの影響かは断定できないのが現状らしいです。
また、広島・長崎の被爆者のデータからも200ミリシーベルト程度なら大丈夫と考えられているそうですが、実際はいろいろな影響があり、これだという数値が出しにくいのが現状のようです。とはいえ実験できることではないので仕方ないでしょう。
通常はどれだけ放射線を浴びているのか
日本人は自然界から年間1.6とか2.4ミリシーベルト程度らしいです。2.4だとその内訳は、宇宙からのものが0.35ミリシーベルト、地面からが0.4ミリシーベルト、食べ物から0.35、空気中からが1.3ミリシーベルトだそうです。(食べ物にも入っていますし、空気を吸っても放射線。またテレビからも電子レンジからも放射線が出ているそうで、実にポピュラーなご存在です。)
日本といっても西高東低の傾向があり、神奈川県では1.4程度、岐阜県では1.8程度らしいです。でも、神奈川県でも箱根のような温泉地帯と横浜の海辺では当然ちがいます。なぜなら温泉が湧いているような所は自然放射線も多いそうだからです。
それでは、世界に目を向けるとどうでしょうか。渡り鳥の条約で有名なイランのラムサールや、ブラジルのガラパリでは、年間10ミリシーベルトは当たり前だそうで、ラムサールの高い測定地点では260ミリシーベルトを超えるそうです。そんな地域でも他の地域よりガンなどは有意に多くないそうですし、逆に他地域より低いという報告もあるそうです。
日本ではどうでしょうか。ちなみに岩盤浴で有名な玉川温泉でも通常地域の10倍程度だそうですが、病気が治った人は聞いても、放射線障害になった人は聞いたことがない、ともあります。
飛行機に乗るとどうなのか
宇宙線の影響を受けやすくなるので、東京からニューヨークの往復で0.19ミリシーベルトだそうです。航空機による被ばくは放射線の種類が違うとしても、200ミリシーベルトで影響が出るとすると、年間、東京〜ニューヨークを1,052回往復する必要があり、どう考えても無理ですね。
医療用の放射線はどうか
歯科用のレントゲンについて説明すると、歯のレントゲン1枚あたり0.01ミリシーベルト。顔の周りを一周するオルソパントモグラフも同等かそれ以下です。ただこの値はおそらくフィルムによるものだと思いますので、撮影時間の短いデジタルの場合は、この10分の1程度ではないかと推察します。つまり0.001ミリシーベルトだとすると、玉川温泉の北投石に30〜40分程度寝っ転がっているのと同じ程度と思われます。
また、仮に健康に影響するのが200ミリシーベルトだとすると、20万枚程度になります。しかし、これは実効線量という全身に対する影響を合計した数値ですので、甲状腺など歯科のレントゲンに近い部分の線量は高いはずですから、20万枚撮ってよいわけではありません。
当院で導入する歯科用のCTは0.1ミリシーベルト程度です。医科用のCTの場合、機種や最新のものか旧型かにもよるらしいですが、頭部で2ミリシーベルト、腹部で8ミリシーベルトだそうです。
ちなみに、胃のバリウム検査は3ミリシーベルト。歯科用のレントゲンの3,000枚分になりますが、200ミリシーベルトが健康に悪影響を与えるとしても、歯のレントゲンなら20万枚、胃のバリウム検査でも年間60回以上、通常の腹部のCTでも25回以上検査しないと影響が出ないと考えられます。
放射線量の目安(実効線量・概算)
- 歯のレントゲン1枚:約0.01ミリシーベルト(デジタルでは約0.001ミリシーベルト)
- 歯科用CT:約0.1ミリシーベルト
- 日本人が自然界から受ける量:年間 約1.6〜2.4ミリシーベルト
- 東京〜ニューヨーク往復(飛行機):約0.19ミリシーベルト
- 胃のバリウム検査:約3ミリシーベルト
- 医科用CT:頭部 約2ミリシーベルト/腹部 約8ミリシーベルト
- 健康に影響するとされる目安:200ミリシーベルト以上
放射線は体に良いか
放射線はできれば浴びない方が良いと思っていましたが、それどころかかえって生命の活力を刺激し、健康に役立つことの方が多いこともあるらしく、最近この現象に対して、微量の放射線だとホルモンのように作用するという意味で「ホルミシス(放射線のホルミシス効果)」という考えが提唱され、研究されるようになってきました。
ホンマかいなと思いますが、人間が昔から自然放射線の多い温泉に好んで行ったり、玉川温泉の北投石に寝転んだり、または海外でブラジルのガラパリでは放射線たっぷりの砂浜で砂に浸かったりしているのは、本能で低線量の被爆は体に良いのを知っているのではとも思ってしまいます。
ICRP(国際放射線防護委員会)の見解
放射線の総本山ICRPによると、「“ホルミシス”と呼ばれるこのような影響に関するほとんどの実験データは、主として低線量における統計解析が困難なため、結論が出ていない。そのうえ、多くのデータが、がんあるいは遺伝的影響以外の生物学的エンドポイントに関係したものである。現在入手しうるホルミシスに関するデータは、放射線防護において考慮に加えるには十分でない」との見解だそうです。
あまり放射線は恐がらず、でも慎重に、が正しそうですね。
記入:2009年11月8日