舌がヒリヒリ痛いと訴える「舌痛症(ぜっつうしょう)」という疾患があります。貧血等の原因もあるとは言われてきましたが、多くは原因不明で、精神的問題で片付けられてきました。しかし、最近の研究では、唾液分泌の低下等の結果である事がわかってきました。ここでは、某大学の専門の先生から受けた講義についてまとめています。
舌痛症の原因
舌痛症の原因として、次のようなものが考えられています。
- 微小外傷
- 舌粘膜や口腔粘膜の被刺激性の亢進
- 粘膜上皮の再生能力の低下
- 唾液分泌低下による保湿度の低下
- 常用薬の副作用
- シェーグレン症候群によるもの
- 神経系の異常
これらは、いずれも口の中の乾燥と大きく関係しているそうです。
舌痛症の特徴
食事時には痛くないが、何もしていない安静時に痛みがある、というのが舌痛症の特徴です。
痛い部位
痛みが出る部位によって、考えられる原因と対処が異なります。
1. 先端や舌の周囲
微小な歯の出っ張り等が原因になっている場合が多いです。
対処
研磨や形態修正を行います。
2. 舌の上面(舌背)
歯の痕が付くようなぶよぶよした舌になっている場合です。義歯が低かったり、舌の運動範囲を狭めるような補綴物が原因として考えられます。
対処
義歯の高さを上げたり、補綴物のやり直しを行います。圧を下げる漢方(五苓散)を用いることもあります。
3. 舌の溝の部分
真菌(カビ)による場合が多いです。
対処
フロリードゲル等の抗真菌剤を塗布します。
治療
舌痛症の治療は、その原因に応じて次のように進めます。
- 原因薬剤がある場合は、主治医と相談して薬の変更や減量を考えます。
- 尖った部分が有る場合は研磨します。
- 義歯の高さが低いのが原因の場合は再製作します。
- 出っ張ったブリッジ等が原因の場合は再製作します。
- シェーグレン症候群の場合は、サリグレン、エボザックを服用します。
- 漢方薬の服用をしてもらいます。(保険適用外)
- オーラルウェット等の保湿リンスを使用します。
- 向精神薬を服用します。(保険適用外)
- 生活習慣の改善を行います(睡眠、飲酒、喫煙など)。
健康保険の適用について
※薬剤には適応症が決められており、舌痛症に適応が認められている薬剤は無いために、健康保険による処方はできないのです。
薬物による治療
西洋薬
口腔乾燥が原因である場合に用います。
サリグレン、エボザック
塩酸セベメリン製剤です。唾液腺のムスカリン受容体に作用して唾液分泌を促進します。胃液や汗も出やすくなります。シェーグレン症候群以外にも有効ですが、保険適応がむずかしいです。
この薬はかなり作用が強いので、持病等を考慮する必要が有ります。胃潰瘍などの消化性潰瘍等の疾患を憎悪してしまう恐れが有ります。
1日3回、1カプセルずつ服用すると有りますが、作用が強いので1日1カプセルから開始すると良いそうです。どちらにしても慎重投与だと思います。
和漢薬
本来は「証(しょう)」を診る必要がありますが、目安として次のように用います。
- 白虎加人参湯:常用薬剤が原因と思われる時や黒毛舌。
- 五苓散:舌に歯の痕が付いている様な場合。
- 十全大補湯:溝状舌や舌乳頭が失われている場合に乳頭を再生させる。
- 半夏寫心湯:地図状舌。
- 六君子湯:舌苔過多。
いずれも、3ヶ月から6ヶ月服用する必要があります。やめる場合も、暫減させます。保険適応外です。
舌の痛みでお悩みの方へ
舌痛症は、お口の乾燥や歯・補綴物の状態など、さまざまな要因が関係します。原因を見極めることが改善への第一歩です。舌のヒリヒリした痛みが続く場合は、お気軽にご相談ください。