- 治療について - 歯性上顎洞炎
歯性上顎洞炎
歯性上顎洞炎とは歯の疾患が原因で上顎洞炎になる事です。
上顎洞炎は俗に蓄膿症と呼ばれている疾患です。
上顎洞は副鼻腔の一つで上顎の歯の上の方に誰でも有る空洞です。そこの中で炎症を起こし膿などが貯留して頭痛や鼻づまりなどを起こす疾患です。
この蓄膿症=上顎洞炎の原因は大きく分けて二つあります。
- 歯が原因で生じる歯性上顎洞炎
- 歯が原因ではない上顎洞炎
症状としては、両者で共通する場合が多く、
- 何となく頬の周辺や目の下に鈍痛がある
- 頭を下に向けると片方の目の下あたりが痛い
- 咬むと違和感や痛みがある奥歯がある
歯に関係ない場合は、風邪などによる鼻腔の急性炎症が原因です。また、アレルギーなどに関連して慢性の副鼻腔炎を起こすことがあります。
これらは耳鼻咽喉科が扱う疾患です。
歯性上顎洞炎
そして、ここでのメインテーマの歯性上顎洞炎について説明します。
歯が原因で上顎洞炎になる場合ですが、どんな歯の疾患で上顎洞炎になるのでしょうか?
健全な歯が原因では歯性上顎洞炎には絶対になりません。
原因となるのは根の治療(根管治療)をした歯が殆どであり、稀に歯の中の歯髄(通称:神経)が虫歯の放置やヒビによって壊死してしまった場合に起こります。簡単に言えば、「神経を取った歯や神経が死んでいる歯」に限られます。
歯の先端には、根尖孔という孔があり、その真上に上顎洞と言う空洞があり、歯の根の先に起こった炎症がお隣の上顎洞にまで炎症を及ぼすのです。
当然、この歯性歯周炎の原因になるのは、上顎洞が近くに存在している上顎の奥歯に限られます。
多くは大臼歯と呼ばれる大きな奥歯ですが、その手前の小臼歯の事もまれにあります。
そして、もう一つ関係するのが、上顎6,7番における根の先から上顎洞との距離です。この根の先から上顎洞までが近い人は、この歯性上顎洞炎になりやすくなります。逆に、この部分の骨が厚く上顎洞までに距離がある人は上顎洞炎にはなりにくくなります。
そもそも、根管治療をした歯が全て、歯性上顎洞炎にはなりません。適切に根管治療がなされていれば、歯性上顎洞炎にはなりません。その多くは根尖孔の閉鎖不全だと当院では考えています。日本では現在でも40年前と同じ側方加圧根充法と言う根の中の充填方法(根管充填)が行われており、これでは緊密に根尖孔の閉鎖ができず、根尖性歯周炎を生じ、それにより歯性上顎洞炎になるケースも多いのです。当院では、側方加圧根充法での根管治療は保険診療でも一切行いません。
診断
診断には歯科用または医科用のCT撮影が必須になります。
歯性上顎洞炎の場合は、歯根の周囲の上顎洞粘膜から上顎洞内がCTの映像で白くみえますので、比較的診断が容易です。
しかし、上顎洞内のCT映像が歯根の周囲のみではなく、全体的に白く見える場合は、歯が原因なのか、そうではないのかは診断に苦慮する場合があります。
歯性上顎洞炎の治療
症状が全くなく、歯科用CTで上顎洞内の多少の炎症像が認められる場合は、経過観察です。あえて治療をしたり抜歯をする必要はありません。
症状がある場合の治療は、抗生物質の服用をして様子を見る場合もあります。
しかし、症状が明らかな場合には、根本的な治療が必要になります。
一般的には歯性上顎洞炎は抜歯とされる場合が多いです。
しかし、私どもで行っているケースルクト法による根管治療の場合、歯が原因の場合は80%程度は治癒しています。ケースルクト法は根尖孔を確実に閉鎖をして根管内から細菌や化学物質が周囲に漏れ出さないようにする事を第一に考えた根管治療法です。
しかし、一度、歯科医師が治療をしてある歯が原因の場合の治療は非常に治療に手間と時間がかかります。それは、被せてある冠から土台、根管充填材のすべてをマイクロスコープを見ながら手作業で除去する必要があるからです。完全にすべてを除去しようとすると、通算3時間程度がかかる場合も有ります。
特に土台に金属やグラスファイバーが使われている場合は、これらを除去するのが困難な事も有ります。その様な場合は、抜歯の適応になる事も有ります。
ケースルクト法根管治療による上顎洞炎の治療期間ですが、1か月程度で症状は消失する場合が多いです。また半年程度後の歯科用CTで上顎洞内の白い部分の改善が認められます。
ケースルクト法根管治療は保険外診療です。ケースルクト法根管治療についてはこちら
ケースルクト法根管治療による歯性上顎洞炎の治療例
上顎洞炎性歯痛
上記の様に歯の疾患が無いのに、風邪などを引いて上顎洞内に急性炎症を起こした場合、上顎の奥歯で噛むと痛い場合があります。これは上記の歯性上顎洞炎の逆のパターンです。特徴としては、上顎片側の広範囲な歯に噛むと痛い症状が生じます。この場合は、抗生物質を服用すれば治癒する場合が多いです。