ODONTOGENIC-MAXILLARY-SINUSITIS

歯性上顎洞炎

上顎洞は副鼻腔の一つで上顎の歯の上の方に誰でも有る空洞です。そこの中で炎症を起こし膿などが貯留して頭痛や鼻づまりなどを起こす疾患です。

歯性上顎洞炎とは歯の疾患が原因で上顎洞炎になる事です。

上顎洞炎は俗に蓄膿症と呼ばれている疾患です。

上顎洞は副鼻腔の一つで上顎の歯の上の方に誰でも有る空洞です。そこの中で炎症を起こし膿などが貯留して頭痛や鼻づまりなどを起こす疾患です。

上顎洞の位置を示す解剖図。目の下にある上顎洞と、その下に並ぶ上の歯、下顎骨の関係を横から見た図

この蓄膿症=上顎洞炎の原因は大きく分けて二つあります。

  1. 歯が原因で生じる歯性上顎洞炎
  2. 歯が原因ではない上顎洞炎

症状としては、両者で共通する場合が多く、

  1. 何となく頬の周辺や目の下に鈍痛がある
  2. 頭を真

歯に関係ない場合は、風邪などによる鼻腔の急性炎症が原因です。また、アレルギーなどに関連して慢性の副鼻腔炎を起こすことがあります。これらは耳鼻咽喉科が扱う疾患です。世界の報告をまとめた総説では、慢性の上顎洞炎のうち歯が原因のものは25〜40%と報告されています。裏を返せば、6割から7割は歯とは関係のない上顎洞炎だということです。

歯性上顎洞炎は、主に根管治療済みの歯や神経が壊死した歯が原因で起こる上顎洞の炎症であり、健全な歯が原因となることはありません。「神経を抜いた歯」や「神経が死んでいる歯」の根の先の炎症が、すぐ上にある上顎洞に広がることで発症します。原因となるのは主に上顎の奥歯(特に大臼歯)で、まれに小臼歯も関与します。上顎の前歯が原因となることはほぼありません。顎の奥歯が歯根先端と上顎洞の距離が近いほど発症しやすく、適切な根管治療で多くは防げます。

当院では主な原因を根尖孔の閉鎖不全と考えており、現在の主流である側方加圧根管充填法では根尖孔の緊密な閉鎖が難しく、根尖性歯周炎から歯性上顎洞炎につながるケースが多いのです。つまり根管充填の不備が大きく関係しています。

根管充填については→こちら

上顎の状態の比較図。左は根の先から上顎洞まで骨が厚く距離がある「なりにくい場合」、右は根の先と上顎洞が近接して貯留液がたまった「なりやすい場合」

歯性上顎洞炎の診断

歯性上顎洞炎の診断には、歯科用または医科用CT撮影が必須です。CT画像では、歯根周囲の上顎洞粘膜から上顎洞内にかけて白く見えるため比較的容易に診断できます。ただし、上顎洞全体が白く見える場合は、歯が原因かの鑑別が難しいことがあります。

上顎洞の歯科用CT2枚の比較。左の正常な上顎洞は白いモヤモヤがなく、右の歯性上顎洞炎では矢印の先に白っぽい塊がある
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歯性上顎洞炎の治療

軽度な炎症で無症状なら経過観察となります。症状があれば根本的な治療が必要で、一般的に抜歯が選択されることが多いです。当院のケースルクト法による根管治療では、歯が原因の場合、約80%の治癒率で抜歯を避けられるのが特徴です。ケースルクト法は根尖孔の確実な封鎖を重視します。ただし、既に治療済みの奥歯が原因の場合、被せ物、土台、根管充填材の除去に手間と時間がかかり、自費診療となるケースルクト法を採用しています。特に土台の除去が困難な場合は、抜歯が適応となることもあります。

ケースルクト法根管治療は保険外診療です。ケースルクト法根管治療についてはこちら

ケースルクト法根管治療による歯性上顎洞炎の治療例

  1. 歯性上顎洞炎
  2. 急性歯性上顎洞炎
  3. 歯性上顎洞炎

上顎洞炎性歯痛

風邪などで上顎洞に急性炎症が起こると、歯の疾患がないにも関わらず、上顎の奥歯で噛んだ際に痛むことがあります。これは歯性上顎洞炎とは逆のパターンで、上顎片側の広範囲な歯に噛むと痛みが生じるのが特徴です。多くの場合、抗生物質の服用で治癒します。

命に関わることはあるのか

歯性上顎洞炎そのもので命を落とすことは、まずありません。この病気を世界の報告からまとめた総説(Craig 2022)にも、死亡についての記載はありません。「死亡」という言葉で調べてこられた方は、まずご安心ください。

副鼻腔の外へ炎症が広がる「合併症」の報告はありますが、報告されている歯性上顎洞炎のうち7%以下です。目のまわり(眼窩)に及んだ報告が最も多く、まれに視力に影響した例も報告されていますが、当院では、これまで目に及んだ症例を経験していません。

おそらく、そこまで進む前に痛みや発熱といった症状が出るからだと思います。多くの方は、その段階で歯科なり耳鼻科なりを受診され、治療を受けられます。合併症の報告があるのは事実ですが、日常の診療で出会うものではない、というのが実際のところです。

自然に治ることはあるのか

風邪をきっかけに起こる急性の副鼻腔炎は、自然に治まることがあります。

歯が原因の場合は、原因の歯が残っているかぎり、すっきりとは治りきらないことが多いです。ただし歯性上顎洞炎には、軽いものから重いものまで幅があります。軽度から中等度では、体調によって良くなったり、悪くなったりを繰り返すことがあり、治療をしなくても、それほど困らずに経過している方もいらっしゃいます。

総説でも、歯性上顎洞炎は慢性の経過をたどることが多く、症状が続いていた期間の中央値は6か月と報告されています。すぐに何とかしなければならない病気ではありません。

見分けるときに、気をつけていること

診断にCTが欠かせないことは先に述べました。ただし、CTにも症状にも、どちらにも例外があります。CTを撮っても歯の周りにはっきりした病変が見えないことがありますし、咬んだときの痛みがまったく無いこともあります。症状が無いから歯ではない、とは言い切れないのです。

ひとつの所見だけでは決められない——ここが、この病気の難しいところです。当院で確かめるのは、CTの画像に加えて、咬んだときの痛み、歯ぐきの状態、歯を叩いたときの反応、そして過去にどんな治療を受けた歯なのか。これらを並べたうえで判断し、それでも決め手が無いときには、無理に決めつけないことが大切だと考えています。

この見極めを誤ったときに失うものは、小さくありません。原因ではない歯の再治療を繰り返し、それでも上顎洞炎が治らないために、最後は抜歯へ進んでしまう——これが、いちばん避けたい経過です。咬めていた歯を、失うことになります。

もうひとつ、やっかいな場合があります。もともと鼻の側から起こった上顎洞炎の方に、たまたま状態のよくない歯があるという場合です。歯が目についてしまうため歯の治療が行われますが、上顎洞炎そのものは鼻の側の病気ですから、歯を治しても上顎洞炎は治りません。耳鼻科での治療が必要になります。

原因が分かっても、治せるとは限りません

「原因の歯が分かること」と「その歯を治せること」は、別の問題です。原因になるのは、すでに根の治療を受けた歯ですから、多くは被せ物と土台が入っています。土台がどうしても外せない、外そうとすれば歯が割れる恐れがある、根が大きく曲がっている——実際には、こうした理由で再治療に進めないことがあります。その場合は、抜歯も含めて別の道を考えることになります。

費用についても、あらかじめお伝えしておきます。当院の再根管治療が自費診療になるのは、被せ物と土台と古い根管充填材を外し、根の先まで確実に処置するのに、大臼歯で3時間ほどかかるためです。日本の保険診療の報酬は、この処置に見合う額に設定されていません。費用はケースルクト法根管治療のページ治療費用のページに掲げています。

抗生物質を飲んでも治らないのは、なぜか

「耳鼻科で薬をもらったが、飲み終わるとまた戻る」——歯が原因だった場合に、いちばん多いご相談です。

総説は、治療できる歯の病気がある場合、飲み薬の抗菌薬だけで歯性上顎洞炎が治ることは通常ないと述べています。膿の出どころが歯の根に残っているかぎり、薬で一時的に菌を抑えても、また溜まるからです。逆に、原因の歯と副鼻腔の両方に手を入れれば90〜100%が治るとも報告されています。

薬を飲んでも繰り返すという方は、歯が原因かどうかを一度確かめてみる価値があります。ただし前述のとおり、確かめた結果「歯ではなかった」ということも十分にあり得ます。

参考文献

  1. Craig JR. Odontogenic sinusitis: a state-of-the-art review. World Journal of Otorhinolaryngology - Head and Neck Surgery. 2022;8(1):8-15. 慢性上顎洞炎の25〜40%が歯性。合併症は報告例の7%以下で、その内訳は眼窩69%・頭蓋内19%・骨4%。症状が続いた期間の中央値は6か月。治療できる歯の病気があるとき、飲み薬の抗菌薬だけでは治らない。原因の歯と副鼻腔の両方を治療すれば90〜100%が治癒。
  2. Craig JR, Cheema AJ, Dunn RT, Vemuri S, Peterson EL. Extrasinus complications from odontogenic sinusitis: a systematic review. Otolaryngology–Head and Neck Surgery. 2022. 副鼻腔の外へ広がった合併症を集めた系統的レビュー。
  3. 堀内隆作、山本忠、鈴木慎太郎、河合俊彦、山本知由、古川博雄:歯性上顎洞炎から眼窩膿瘍を発症し失明に至った1例. 日本口腔外科学会雑誌. 2007;53(7):425-429. まれではあるものの、目に及んだ症例の報告。

この記事の執筆者

久保倉 弘孝(歯科医師・医療法人社団:敬友会理事長)

1986年に小机歯科医院を開設。K.SRCT(久保倉式スーパー根管治療)考案者。ICOI国際インプラント学会指導医(Diplomate)、歯科医師臨床研修 指導歯科医。

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※当ページの情報は一般的な歯科知識の提供を目的としており、個別の診断・治療に代わるものではありません。お口の気になる症状はかかりつけ歯科医にご相談ください。

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副鼻腔炎が治らない、その原因が歯かもしれません

歯が原因の上顎洞炎は、耳鼻科の治療だけでは治りきらないことがあります。原因の歯を突き止め、根管治療で治す道があります。まずはご相談ください。

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