根の中に人工物を詰める治療
根管治療（歯の根っこの治療）とは、不幸にして歯の中身の歯髄（通称：神経）を取ってしまった場合の治療です。 ただし、この治療が終われば 被せてしまいますので、レントゲンでも撮ってみないかぎりはどのような治療がなされているのかは知ることは出来ません。
ちょうど、建築の基礎工事と一緒です。家が建ってしまえば基礎は直接見ることができないため、どんな工法で行っているかは伺い知ることはできません。
家の基礎が悪いと家が傾いたりしますが、歯も一緒です。突然、噛むと痛くなったり歯が浮いたりする症状が出現します。
治療の方法自体は根管治療のページで説明しましたが、このページでは根管治療の最終段階の根管充填について模式図で説明します。
根管充填とは、読んで字の如く「根の中に何かを詰め込む事」です。これは、とても重要な事なのです。
ワインのビンのコルク栓のように根の先迄ぴったり蓋をしないと、空洞部分に細菌が住みつき根っこの先の骨を吸収したりして、根尖病変（根釧病巣）と言う物を生じさせてしまいます。この根尖病変（根尖病巣）については、膿の袋と言われる場合もありますが、正確には慢性的な感染の場合、膿までは生じていません。肉芽組織や嚢胞組織と言う骨では無い組織に置換されているのです。
根管充填の材料には、大きく分けて２種類あります。一つは糊のような流動性のある物です。そしてもう一つは、「ガッターパーチャ」と言うゴムの親戚の様な固体があります。（最近、ポリプロピレン製の充填材が発売されましたが…。）
ガッタパーチャは固体ですが、熱をかけたりユーカリ油につけると、半固体になる特性を有しております。この性質がとても重要なのです。
それでは、具体的にガッタパーチャによる根管充填について説明します。
このガッタパーチャによる根管充填（歯の根っこの治療）は大きく分けて２種類に区分されます。それは、「側方加圧充填」と「垂直加圧充填」です。
側方加圧と、垂直加圧の大きな違いは、側方加圧充填の場合、ガッタパーチャが固体のまま糊をつけて、根管に沢山詰め込みガッターパーチャーの側面に押すのに対して、垂直加圧充填の場合はガッターパーチャーを根の先の方に向けて押す方法ですが、多くの場合、熱をかけてガッターパーチャを半固体にする点が大きく異なります。
側方加圧根充法と垂直加圧根充法のどちらが優れているかは、論文的には垂直加圧法が優っているとされています。しかし、実際に行われている患者さんの歯の治療を比較しても、術者も歯も違う様な場合には、正確な比較は困難なのです。
小机歯科医院では今から、２５年以上前は側方加圧根充法を行っていました。しかし、その後、垂直加圧根充法に切り替えました。その経験からしますと、劇的に予後がよくなりました。そして色々と改良を加えて今に至ります。
垂直加圧根充の主な方法
オピアン法
日本で開発された方法。ガッタパーチャを火に一瞬あぶり、更にユーカリ油につける事により半固体にして詰め込み、器具を使い垂直にガッターパーチャを押す方法です。根の先の孔の根尖孔の閉鎖はピカイチ。しかし、この方法の原法はロングダイアモンドバーと言う切削力の高いバーで根の中を削るために、歯の内面を削りすぎて、強度を落とすと共に、歯の外への穿孔等のトラブルが多発した様です。よって、現在は廃れてしまいました。
Continuous Wave Condensation Technique (CWCT法）
この方法は、04.や06テーパーと言うある程度太いガッターパーチャーを１本を根管内に入れて、それに瞬間的に２００度程度になる針の様な器具を押し当てて加熱しガッタパーチャを加熱します。そして、垂直的に加圧する事で、ガッターパーチャーの連続的な波動が起こり、それによって温度が緊密な根管充填が行える方法です。この方法は主に米国の根管治療専門医が用いる方法です。
側方加圧根充法に比べれば予後は良いですが、瞬間的に熱を発生させる装置が根管内の奥まで差し込まれていない場合は、根の先のガッタパーチャは軟化できない場合が多いのです。この場合、根尖孔の閉鎖は確実ではありません。こうなると側法加圧根充とあまり変わりません。よって思った通りの予後は期待できません。
ただ、根管の中の削り方は規格化されているのはとても良いのです。
Hydraulic Condensation Technique
この方法は、上記のＣＷＣＴ法に準じる方法。使う材料に流動性に飛んだ生体親和性のセラミックの糊とガッターパーチャを使う方法。簡単と言うものの、根管形成をしっかり行わないと予後が良くないのは容易に想像がつきます。また、ガッタパーチャの熱可塑性という良い性質を使っていません。
K.SRCT法
僭越ながら、理事長の久保倉が開発した方法。根の中の削り方はCWCT法の規格化された方法を採用しています。そして、根充方法はオピアン法を用いています。歯の中を削りすぎない、かつ、根の先の孔である根尖孔の閉鎖に優れている方法です。当院根管治療、はこの方法を用いています。この方法は日本歯内療法学会でも発表しています。また、専門書も出版してあります。
側方加圧根充法と垂直加圧根充法のイメージ
側方加圧根充のイメージ：固体に糊を付けて押し込む方法。これでは根の先の閉鎖が不十分で、いつまでも咬むと痛いのはこの根尖孔が密閉されていない事による場合が多い。
垂直加圧根充のイメージ：軟化した根管充填材で根の先の孔を閉鎖するので、咬んで痛い症状は１週間で消失する。
記入 2003/03/12
改変 2011/12/04
改変 2020/09/03
改変 2024/01/12
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