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- 治療について - 根管治療(こんかんちりょう)

根管治療(こんかんちりょう)

歯の構造について

歯髄

歯は饅頭と構造は同じです。皮に相当する部分があって、餡に相当する中身が入っています。
歯では、皮に相当する部分がエナメル質や象牙質。そして餡に相当する部分を歯髄と呼びます。

エナメル質や象牙質は硬く、歯髄は柔らかい組織です。そして、歯髄は歯科治療の際に、麻酔が効かない状態で触ると飛びあがる程に痛いので俗に”神経”と呼ばれています。しかし、実際には、細胞や血管も有るれっきとした体の一部の組織です。

また、この歯髄の容積は加齢と共に少なくなります。それは、歯髄の細胞が歯の内面から象牙質を作り出すからです。逆に、象牙質は高齢者の方が若年者よりも一般的には厚い傾向があります。

歯の構造

歯の構造

どんな時に根管治療が必要なの?

この歯髄は非常に大切なもので、できるならば健全な状態に保ちたいものです。ところが、虫歯を作ってしまい夜も寝られないような状態にると、細菌感染により歯髄は壊死、つまり腐ってしまいます。こうなると根管治療が必要になります。

その目安としては、夜中に歯が痛くて目が覚めたり、その歯で咬むと痛くて咬めない様な症状がある場合です。

手や指の皮膚表面の様な通常の組織の場合には、重篤な細菌感染を起こしても抗生物質の使用で治ります。しかし歯髄の場合、根の先にある直径0.1~0.3ミリ程度の根尖孔という小さい孔からの血管のみで循環がおこなわれています。よって歯の外部からの感染によって歯髄は容易に壊死して(神経が死んで)しまいます。そして、抗生物質による除菌は無効です。よって、この部分は体の中ではとても特殊な部分なのです。

また、一度根管治療を行ったにもかかわらず、根管の中の空洞等の存在によって、根の先に膿が溜まり、痛みが出た場合には再度の根管治療を行わなければならないケースもあります。また、根管治療の不備により、根の先に歯根嚢胞(しこんのうほう)と言う骨が無くなってしまう様な場合もあり、嚢胞の大きさによっては何らかの処置が必要になる場合もあります。

しかし、現在では痛みが無ければある程度深い虫歯でも出来る限り歯髄は保存、つまり神経はとらないようにしています。実際には、3ミックス(3種類の抗生物質を組み合わせて歯の中の象牙質に直接入れる方法)を使用したり水酸化カルシウム製剤、ドックスベストセメント(銅イオンの殺菌性を利用したセメント)を使用して、虫歯である部分をできる限り無菌化して虫歯によって柔らかくなった象牙質を再度、硬化させる方法をとります。ただし、死んだ人間が生き返らない様に、完全に壊死をした歯髄にこの様な治療を行っても無意味です。

ただ、歯髄の再生治療という新しい治療も行えるようになってきました。それに付きましては歯髄再生治療をご覧ください。

根管治療とはどんな治療?

簡単に言うと、根管内の壊死物質を除去して洗浄、除菌をします。そして根管内から根の先の孔(根尖孔)にピッタリと蓋をして歯を残す治療です。その後は土台を作って冠を被せて歯として使える様にします。

歯が健全なうちは、根尖孔から歯の中に血管が入り歯髄の中を循環しています。しかし、虫歯になって歯髄が壊死をすると、逆に根管内が細菌の住処(すみか)になってしまいます。しかも歯髄を取ってしまえば、歯の中には血管がありませんので、血管から色々な免疫物質が出てきて細菌を攻撃してくれることも期待できません。つまり、歯髄が壊死をしてしまうと、歯の中は細菌にとっては、増殖しやすい環境になるのです。そして実際に細菌が増殖すると膿となって、根尖孔から顎の骨の方に細菌が出てゆきます。こうなると歯茎の一部が腫れるようになります。

また、根管内の歯髄が壊死をしてしまうと、細菌以外にも色々な化学物質を生じ、それが、根尖孔から漏洩する事により歯が埋まっている骨にも悪影響を与えます。

よって、根管治療は以下の2つを達成させる事が必要になります。

1,出来る限り根管内の無菌化と無毒化

2,根尖孔の完全閉鎖

以下に、そのステップを説明します。

根管治療の治療順序(抜髄処置):まだ一度も歯科医師が治療をしていない根管治療

1.壊死歯髄の除去 先ず、虫歯になってしまった部分を削って腐ってしまった歯髄組織を露出させます。 医療用次亜塩素酸などの薬剤を使って消毒等をしながら、腐ってしまった歯髄組織を除去します。この場合マイクロスコープを使って壊死組織を取り残さないようにします。
2.根尖孔を探す 歯の中にマチバリの様な器具(ファイル類)を入れて、歯の中から根の先を探します。
歯は工業製品では無いので、根の先の孔が細くなっていたり根の先で根が曲がっている場合も多く、奥歯の場合は簡単に見つからない事が大多数です。マイクロスコープを見ながら手作業で注意深く見つけます。歯の根の数は、前歯では1つ。奥歯は3~4本ですので、奥歯は前歯の3から4倍以上の手間がかかります。
3.根管拡大 歯髄を除去した空洞を器具(ファイルとかリーマーと言う腫瘍器具や、電動で回転するファイル類)を使って広げて、根尖孔を閉鎖するための道を作ります。
4.根管洗浄 根管の中に、医療用次亜塩素酸等で殺菌すると共に、壊死物質を完全に取り除きます。更にEDTAと言う溶液で、ミクロン単位の歯の削り屑も取ります。
5.根管充填 歯髄の中に、腐らないゴムの様なガッターパーチャ+セメントで根尖孔を緊密に充填します(根管充填)。 その際に最も重要なのは緊密な根尖孔の閉鎖です。
6.支台築造 被せるための土台(コア)を作ります。前歯の場合、健全な歯質が多かった場合は歯の裏側から樹脂を詰めて終了する場合も有ります。
7.被せます 色々な素材を使って被せます。現在では金属を使うより、セラミックを使う方が再治療の確率は下がります。

ステップを細かく説明します。

根尖孔を探す

根の先を探す

先ずは、局所麻酔をします。そしてラバーダム防湿。(健康保険診療の場合は行わないこともございます)

マイクロスコープを覗きながら歯を削って、歯髄を露出させてから細菌感染により炎症を起こした歯髄を取り除きます。それからファイルと言う器具を根管に挿入して根の先を探します。

マイクロスコープを使っても、見えるのは入口だけですからあとは手指の感覚を頼りに行います。

前歯の根は真っ直ぐが多いですが、奥歯は曲がっています。そのため、段差が付かないように注意深く根の中にファイルを進めて行って、根の先を見つけます。

根の先を発見し根の長さを測定するのには、電気的根管長測定器という日本人が発明した測定器具を使います。

なお、以前に根管治療を受けて有り、痛み等の不具合が出た場合に行うのが再根管治療です。この場合は、クラウン(冠)を外してから、金属で作ってある土台(コア)を外し、更に根の中に詰まっているガッタパーチャと言う充填材を外す必要があります。そして初めて根尖孔を探す事ができるようになります。よって非常に手間がかかります。

根管形成

根管形成

歯を安定した状態で保つ為には、根尖孔に緊密にガッタバーチャという充填材を充填する必要があります。ところが、歯髄が入っていた根管は細く湾曲しています。それを整えて根尖孔を詰めやすくする事を根管形成と言います。(左の図は模式図です。実際にはこんなに寸胴にはしません。)

ドリルの様な回転切削器具も用いますが、根の先1/3に関しては回転切削器具は使わない方法を当院では採用しています。根尖孔を必要以上に広げて、破壊しないためです。

この根管形成は、炎症を起こして壊死した歯髄組織を取り、出来る限り根管内を無菌状態にする処置も同時に行います。ただ、実際には完全なる無菌状態にする事は出来ないとされています。よって完全に無菌状態に出来ない代わりに、根の先にピッタリと蓋(コルク栓の様な詰め物)をして残存物質が根尖孔外に漏れ出すのを防ぎます。

しかし根管内の内面を削りすぎない注意が必要になります。当院では根尖孔が緊密に閉鎖できる最小限の根管内の切削に留めます。根管内の過剰切削はのちに歯の根が折れてしまう、歯根破折の原因になるからです。

根管充填

根尖孔を塞ぎ、根管内に人工物を充填します。

詰める材料は、流動性の有るゲル状のものと、固形物があります。主流は固形物で、なかでもガッタパーチャと言う物質が一般的です。これは粘りの有る物体で、熱やユーカリ油で軟化します。ここでは、これを用いた根管充填についてはこちらで説明します。以前はガッターパーチャ単独で充填するテクニックも有りましたが、現在はガッタパチャにセメントをつけて充填するのが普通です。

当院では、この根管充填に関しては、垂直加圧充填法を採用しております。

根管充填後のレントゲン

根充後のレントゲン

日本の保険診療の根管治療がかかえる問題点

先進国で、インプラント1本よりも根管治療が安い国は日本だけと言われています。
米国では大臼歯の根管治療は12万円~30万円程度と言われていますが、しかし、日本の健康保険の診療報酬は約9千円程度です。これではどうしても、良い治療をしようと思えば、無理があるのが現実なのです。

当院では、通常の保険診療の根管治療も行っておりますが、より精度を求めた自由診療の根管治療(スーパー根管治療)も行っております。スーパー根管治療はCTによる立体的な画像診断を行った後にマイクロスコープ、ラバーダムを用いて治療します。スーパー根管治療(ケースルクト法)の詳細はこちら

日本歯内療法学会という根管治療の学会の説明はこちらです。

当院サイト内のリンク

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