- 治療について - 歯髄再生治療・歯髄移植治療
歯髄再生治療・歯髄移植治療
歯髄って何?
歯の中には、歯髄(シズイ)と言う組織が入っています。この組織は人体の中では非常に特殊な性質があります。通常の人体の組織の場合は、細菌感染を起こした場合に直ぐにその組織が壊死する様な事はありません。大抵は、体の中に備わっている免疫力が直してしまいます。
しかし、この歯髄組織は、非常に感染に弱いのです。よって歯が痛い頃には、かなりの歯髄組織がダメージを受け、もう元の活力をもった歯髄組織には戻れない場合が多いのです。
又、ケガの様な外傷で歯が折れて、歯髄が露出してしまうと、容易に壊死をしてしまいます。こうなりますと、治療は、根管治療が行われる事になります。この治療でも問題がない場合が多いのですが。どうしても根管治療を行うと、歯の内面を削るために、埋まっている歯の歯根が折れる、歯根破折を起こす場合があり、問題になってきました。
歯髄再生とはどの様な治療なのか
正確に言うと、この歯の歯髄細胞そのものを再生させるわけではありません。ご本人の口の中にある、親知らずや過剰な歯を抜歯し、その歯の中の歯髄細胞を専用の施設で取り出し、そして培養します。それを歯髄が壊死してしまった歯の中に移植をするのです。また、以前に乳歯を抜歯して歯髄バンクと言う施設に預けてあった場合には、その細胞を培養して、他の歯の歯髄再生等に使う事もできるのです
この方法は、国立長寿医療センターの中島美砂子博士が2012年から研究されて開発されました。そして、小机歯科では、この方法を技術供与を受ける形で実現しています。当然ながら、日本独自の医療技術です。世界初と言っても良い技術です。(参考:内閣府による歯髄再生の研究資料)
ただ、この再生医療は、どの歯科医院でも出来る方法ではなく、技術供与と共に、厚生労働省に第二種再生医療としての認可が必要になっております。当院では、2022年の2月に届け出をし受理をされております。
尚、安全性については、中島博士らによって確認されています。また、何等かの不測の事態が生じた場合は、所属する再生医療委員会に届け出をして協議をする体制になっております。
歯髄幹細胞培養依頼施設はアエラスバイオ株式会社
どの様な場合に適応になるのか?
- 割れていない歯。ヒビも含みます。
- 歯冠崩壊が大きくない歯。
- 根管形態が複雑すぎない歯。
良い適応症例
- 小学生の外傷の前歯(永久歯)
- 矯正治療で壊死をしてしまった歯
小学生の前歯で特に低学年の場合、転んだり、ぶつかったりして歯を折ってしまう場合もかなりあります。この場合、成人が歯を折ってしまう場合とかなり事情が違うのです。それは根が未完成だからです。 根が未完成の場合、根管治療が非常にうまくゆかない場合が多く、抜歯になってしまう場合も多いのです。この様な場合に、歯髄の再生ができれば、歯根を完成さえる事も出来ると考えられています。よって、この歯髄再生の治療は、この様な場合に最も適しており、期待がされています。 又、滅多にはありませんが、矯正治療中に歯髄が壊死して歯が変色してしまって気が付く場合もあります。この場合も歯髄再生はし易いと思われます。ただ、症例が少ないために、歯髄再生をすれば変色が戻るかは明らかではありません。
歯髄再生の手順
1.不要な歯の抜歯(親知らずや乳歯、過剰歯)と、ご自身の健康チェック | 先ず、歯髄組織を培養する必要があります。そのための供給側としての歯の抜歯をし当院提携のアエラスバイオ社
に歯髄バンクとして預けていただきます。そしてアエラスバイオ社で歯髄細胞の増殖を行ってもらいます。4週間程度はかかります。また、この歯髄移植は全身状態によっては出来ない場合がありますので、内科等で血液検査を受けていただき、健康のチェックを行っていただきます。 |
2.壊死歯髄の除去 | 歯髄再生をする歯の中の壊死物質を除去します。 |
3.根の拡大 | 歯髄を除去した空洞を器具(ファイルとかリーマーと言う手で使う器具から、電動で回転するファイル類)を使って拡大します。 |
4.根の中の洗浄 | 根管の中を消毒洗浄します。歯髄再生の場合は、通常用いる薬剤は使えません。移植歯髄に影響を及ぼすからです。 |
5.歯髄細胞の移植 | 歯髄が有った根管の中に、培養した歯髄を移植します。 |
6.入口の閉鎖 | 移植した入口の部分を閉鎖します。 |
7.定期的な観察 | 決められた定期観察を受けていただきます。 |
費用
根管数は、歯髄移植の前の治療で確定します。おおよそはCTレントゲンで分かります。
歯髄再生ができなかった場合は、通常の根管治療(ケースルクト法)にて治療をする費用を含みます。尚、私どもはチームとして歯髄再生に取り組んでおります。そして最善を尽くす努力をいたします。それでも、残念ながら歯髄再生が出来なかった場合、費用の返却はできませんのでご了承下さい。
又、被せる必要がある場合は、別途費用がかかります。
この他に定期健診の費用は5000円程度かかります。
内科医に対する健康診査の費用は別にお支払いください。
歯髄の再生が出来なかった場合は、通常の根管治療で治療を終えます。ここまでの費用を含みます。ただし、この場合でも歯髄再生治療費用の返還や調整は出来ません。
検討課題
歯髄再生治療は始まったばかりの治療です。よって、もっと症例が集まる必要があります。また、根管内は通常の体の一部と違って免疫が無いと考えた方が良い部分です。その部分での細菌感染をどうコントロールするかが課題だと言えます。