ひょっとしたら、妊娠しているかもしれないのに、今日、歯科医院を受診したときに、はっきり言えなくて、レントゲンを撮ってしまった。さてどうしよう。 なんて思い悩んでいる方も多いかと思います。
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妊娠していても心配有りません。と言っても、妊娠していると分かれば滅多には撮影はしません。放射線のエネルギーが人体にどれくらい被曝したのかを表す単位はシーベルト(Sv)で表されます。放射線と言うと、広島、長崎、チェルノブイリなどを思い出させ恐ろしい感じがしますが、私たちが普通に生活していても、地面や大気からも体に浴びています。又、遮蔽はされていますが、テレビや電子レンジからも出ています。又、食品からも低線量の被爆を常に受けています。妊娠中の赤ちゃんは当然、お母さんの下腹部に居るわけですから、そこへ何Svを被爆したかが問題になります。
妊娠の時期にもよりますが、一度に胎児に直接50~100ミリシーベルトを 浴びさせてしまうと、流産や小頭症などの奇形の危険が有ると言われてます。
この胎児に直接、50~100ミリシーベルトを浴びるとはどれくらいなのでしょうか。
歯のレントゲン撮影をした場合の胎児の浴びる放射線量はデジタルエックス線装置で 約 0.0008ミリシーベルト。
つまり 62500枚から125000枚という莫大な枚数を撮らないかぎり胎児に影響は有りません。
ちなみ1秒間に1枚撮影するとしたら、約1日間ぶっ続けで撮影した場合になります。(2009年に読んだ本では、胎児の浴びる放射線量はもっと低く0.0001ミリシーベルトとありました。)
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又、歯のレントゲンと言っても、口の中にフィルムやセンサーを入れる通称デンタルレントゲンという撮影方法と、大きな装置で、顔の周りを 機械が回るオルソパントモグラフが有ります。フィルムの面積もオルソパントモグラフはデンタルレントゲンに比べて、30倍位はありそうです。それでも、 どちらかの被爆が高いかと言いますと、実は大きい装置、大きいフイルムのパントモの方が低いのです。凡そ2~3分の1です。ですから、あの大きな装置で撮るパントモならば、20万枚位とらないと胎児には影響はないとされてます。
以上のデータは鉛の入ったプロテクターエプロンをしていない場合です。プロテクターをしていた場合、胎児の居る下腹部への被爆は0だそうですので、尚更に心配する 必要は有りません。よって鉛のエプロンは、しないでも殆ど問題はないですが、患者さんの安心のためにしているのが実情です。
そして、実際の生殖器(胎児)に対する被爆量はどれくらいかと言いますと、Beanらによると、デンタルレントゲンを18枚を撮影した場合でも、自然界から 受ける放射線の36分程度にしか過ぎないそうです。このデータは1969年のものですので、今では、レントゲンの装置の管電圧が高くなったり、フィルムの高感度化や デジタル化で、もっと少ないと考えて良いと思われます。
だったら、妊婦にレントゲンをバンバン撮って良いかと申しますと、なるべく撮らない方が良いでしょう。
ICRP(International Commission on Radiological Protection) と言う国際放射線防護委員会によると、妊娠から出産までは、10ミリシーベルトにすると勧告されてます。
ちなみに、妊娠中に胎児に最も影響の有る検査は腸のレントゲン撮影で、それでも胎児に対しては3~7ミリシーベルト。当然デジタル化されてましたら、もっと低い値になります。
又、自然界から私たちが受ける自然放射線は、2ミリシーベルト。
東京~ニューヨークを航空機で往復すると0.19ミリシーベルトです。(胎児が受ける量はもっと低いです。)
妊娠していない通常の状態の人と検診でのレントゲンの関係については、(財)東京都予防医学協会のHPに詳しく書いて有りますので、ご覧下さい。
もう少し詳しくレントゲンの事について書きましたので、御覧ください。
【レントゲンと被爆】
最後に、必要以上にレントゲンを怖がる必要は有りません。
参考文献
鹿島 勇 閉野政則 歯科臨床における画像診断の現状と展望、日本歯科評論 No599,600,1992 JEMES W.LITTLE : DENTAL MANAGEMENT OF THE MEDICALLY COMPROMAISED PATIENT, MOSBY 1984
夕刊読売新聞 2版 1999.12.26
記入03/7/18
追補09/11/8