ただ、色々HPを読んでみますと、私たち歯科医として、注意しなければいけない事が有るのに気が付きました。
- 治療について - アレディアとゾメタ
アレディアとゾメタ
アレディアとゾメタ(登録商標)
- 注射剤で有ること。多くは入院患者さんに行われるとは思いますが、その後退院したり、外来でも点滴静注している事も考えられます。 患者さんは毎日服用している薬については、よくご存知で、お薬手帳にも書いてあるので、歯科治療の際にもお知らせ願えますが、注射剤の場合は、数週間前の注射など忘れてしまっているのではないかと思いました。
ですから、乳がん等の既往歴を言っていただいた患者さんについてはもちろんですが、 健康そうな患者さんにも注射剤等の点を問診しなければいけのかと思いました。 - この注射剤を行った後の抜歯は避けなければならないのは当然ですが、口腔内の汚れも、下顎骨の壊死に関連するらしいのです。製造販売元のノバルティスのHP には、投与前は患者さんの口腔内の状態を注意深く観察してくださいと書いてあり、更に同社のHPには海外の顎骨壊死の予防、、、専門委員会 の提言:2004年6月の和訳が載っておりました。それには、やはり投与する前に、歯及び歯の周囲の感染を調べる為に、レントゲン撮影を含めた臨床検査の定期的な実施が推奨されるとありました。
顎は当然に食物を食べるのに必要ですし、それほど骨を削れませんので、顎骨の壊死はできるだけ 予防する事にほかなりません。がん治療にあたる先生方におかれましてこの薬剤を使われる場合は、院内の口腔外科や患者さんが おかかりの歯科医にご一報いただき、口の中の状態についてお耳を傾けていただけるとありがたいと思いました。
追補
ビスフォスフォネート製剤(以下BP製剤)における顎骨壊死の報告は2003年のMarkによる報告が最初とされ、
世界中で2400例を超える症例が有るそうです。日本でも口腔外科学会雑誌にはかなり報告がなされる様になってきました。症例の3分の2は女性であり下顎骨が3分の2上顎骨が3分の1だそうです。
又、BPによ、顎骨壊死の統一した診断基準は暫定的に定義されているそうで、「顎骨への転移性病変または、放射線骨壊死と診断できず、6週間にわたる適正な歯科的評価および治療によっても全く治癒が見られない骨露出」と言うことです。
尚、顎骨壊死の症例は全体の60%が抜歯などの歯科処置に続発して生じ、40%は義歯が擦れたり外傷や感染などにより生じるそうです。又、特筆するのは、20%は自然発生との事です。
アレディアとゾメタは窒素含有BPと呼ばれ、骨に強固に結合し半減期が約10年だそうで、骨への為害作用は特に強いそうだ。しかし、癌には効果が有るために多用されているそうで、その場合、ステロイドホルモ剤との併用により骨への外科的処置により骨髄炎や顎骨壊死を発症する危険がさらに高まるそうだ。
治療については、確立されておらず、いじると悪くなるそうです。
アレディアやゾメタ以外のビスフォスフォネートでも顎骨の炎症の報告がなされています。それは骨粗鬆症の際に服用されてるリセドロネート(ベネット)やアレンドロネイト(フォサマック)等の経口薬です。(エチドロネートのダイドロネルでの報告はないそうです。)
骨粗鬆症の経口薬はかなりの方が服用されている様ですので歯科医院におかかりの際には必ず申告してほしいですね。
BP剤
注射剤一覧
製品名 | 適応症 | 製造販売 |
---|---|---|
アレディア(パミドロン酸ニナトリウム) | 悪性腫瘍 | ノバルテイス |
オンクラスト、テイロック (アレンドロ酸ナトリウム水和物) |
悪性腫瘍 | 万有 、帝人ファーマ |
ビスフォナール(インカドロン酸ニナトリウム) | 悪性腫瘍 | アステラス |
ゾメタ(ゾレドロン酸水和物) | 悪性腫瘍、多発性骨髄腫 | ノバルテイス |
海外の文献からすると、顎骨壊死の発生頻度は、0.88~1.15%
経口剤
製品名 | 適応症 | 製造販売 |
---|---|---|
ダイドロネル(エチトロン酸ニナトリウム) | 骨粗鬆症、脊髄損傷後、股関節形成術後骨ページェット病 | 大日本住友 |
フォサマック、ボナロン(アレンドロン酸ナトリウム水和 | 骨粗鬆症 | 万有 、帝人ファーマ |
アクトネル、ベネット(リセドロン酸ナトリウム水和物) | 骨粗鬆症 | 味の素(販売:エーザイ) 武田 |
海外の文献からすると、顎骨壊死の発生頻度は、0.01~0.04%
これら、BP剤は乳がん等の骨転移の疼痛緩和、骨そしょう症における骨折の予防にはとても有効だそうなので、使用を否定するつもりは一切ありませんし、経口剤においての発症率は滅茶苦茶低いのであまり怖がるのはどうかと思います。しかし、一度顎骨壊死を起こすと、治療法が無く大幅にQOLを低下させてしまうのが困ったものです。
よって、これらを投与の予定がされている場合は、主治医とよく相談をして、歯科治療を先行させて終了させたり、口腔ケアを十分に行う事が重要とされています。
現在(2020年)では、これらのビスフォスフォネート製剤のほかにも、デノスマブと言う製剤にも顎骨壊死を引き起こす事が報告されています。商品名はランマークとプラリア。両方共に飲み薬ではなく、皮下注射薬。ランマークは骨髄腫、プラリアは骨粗しょう症の薬です。プラリアの場合、半年に1度の皮下注射なので、患者さん自身は先ずは覚えていないのではないかと思います。それでいて、抜歯等の外科処置を行った場合の顎骨壊死の確率は0.1%程度とされています。
田中徳昭 他 :ビスフォスフォネートに関連したと考えられる下顎壊死の2例、日口外誌、53:392-396 2007
望月裕美 他:乳癌骨転移に対するビスフォスフォネート療法に関連して発症した下顎骨壊死に対して顎下腺移動術を施行した1症例、日口外誌、53.:314-318 2007
山口晃史 他:ビスフォスフォネートが原因と考えられる下顎骨壊死の一例 発症機序と予防に関する考察、日口外誌、54:602-606 2008
米田俊之:ビスフォスフォネートの有用性と顎骨壊死(下)、月刊保団連 、99:58-64 2009
追補 2008年7月13日
追補 2020年9月7日